勝手にしやがれ
仏題「A bout de souffle」
フランス映画好きで映画「勝手にしやがれ」(仏題「A bout de souffle」監督/ジャン・リュック・ゴダール1959年)を知らない人はいないでしょう。ヌーベルバーグの先駆けとなるこの映画、舞台はもちろんパリ。凝ったセットではなく、パリの街並みやカフェ、ホテルで撮影されたゴダールの長編デビュー作。ジャン・ポール・ベルモンド演じるチンピラ(ミシェル・ポアカール)と、ジーン・セバーグ演じるベリーショートが似合うのアメリカ娘(パトリシア・フランキーニ)の物語。英語訛りのフランス語でミシェルの強引な誘いをさらっと交わすパトリシアが最高に可愛い。今回は、モノクロ写真でそんな名場面が撮られた場所にシネマトリップしてみました。
☆シャンゼリーゼ大通り 「Avenue des Champs-Elysées」
このシャンゼリーゼ大通りには、「勝手にしやがれ」で使われたいくつかのスポットがあります。
マルセイユで車を盗み、追ってきた警察を射殺してしまったミッシェルは、殺人犯として指名手配中。そんな中、南仏ニースで知り合ったベタ惚れのパトリシアとシャンゼリーゼ通りで再会する。ジャーナリストを目指す彼女は、ソルボンヌ大学で学生をしながら新聞売り子をしている。「ニューヨーク、ヘラルド、トリビューン!」と声を張り上げながら歩くシーンは言わずと知れた観光名所、ここシャンゼリーゼ大通りで撮影されています。
余談ですが、この映画のシナリオを担当しているのはあのフランソワ・トリュフォー(「大人は判ってくれない」他、監督。)。そして、若きジャン・リュック・ゴダールも、フランソワ・トリュフォーもソルボンヌ大学の学生でした。●最寄りメトロ/「CHARLES DE GAULLES ETOILE」1,2, 6番線

☆ジョルジュサンク駅 Gerge V
凱旋門からシャンゼリーゼ大通りを下ってくると、映画の中でミシェルが地上に出てくるシーンが撮影された地下鉄ジョルジュサンク駅。●最寄りメトロ/「GERGE V」 1番線
☆キオスク le kiosque
ミシェルが新聞を買うシャンゼリーゼのキオスク。警察を殺した「殺人犯」として指名手配中の自分の写真がでかでかと載っている。サングラスと新聞で顔を隠しながら、タバコを吸うミシェル。
☆映画館トリオンフ 「Cinéma Triomphe」
ミシェルと一緒にいたことで、警察に尾行されるパトリシア。シャンゼリーゼ大通り92番地にある映画館トリオンフに入り、トイレに行くふりをして追ってきた警察官を巻く。
残念ながら、この映画館トリオンフは閉館中でした。近くの映画館に勤める年配の人に話を聞くと、このシャンゼリーゼ大通り付近ではゴダール、トリュフォーをはじめ、多くの映画が撮影されたそうです。その方が働く建物も実際にゴダールが映画の撮影に使ったことがあるそうです。映画のワンシーンが撮影された場所がなくなってしまうのは、映画ファンにとっては寂しいものですが、きっとまた新しいスポットが生まれることでしょう。
☆カフェ・ル・セレクト 「Cafe le Sélect 」
盗んできたキャデラックをこのカフェの前に乗りつけるミシェル。ここは、地下鉄ヴァヴァン駅から程近いところにある老舗カフェ。いつも観光客や映画ファンで賑わっています。
モンパルナス駅からヴァヴァン駅、ラスパイユ駅付近は大きな映画館はもちろん、小さな映画館が多く点在しています。パリで一番シネマが多い地域なのではないでしょうか。それだけ映画関係者、映画を愛する人たちが集う場所なのです。
ここで撮影された映画を反芻しながらコーヒーを飲むのは至福の時間。晴れた日はテラス席が気持ちいい。ミシェルやパトリシアのようにテラスでタバコを吸う人も多い。
●住所/99 Boulevard du Montparnasse, 75006 Paris
●最寄りメトロ/「Vavin」 4, 6番線
☆カンパーニュ・プルミエール通り 「Rue Campagne Première」

あの最後の名場面が撮影されたのがこのカンパーニュ・プルミエール通り。パトリシアが警察にミシェルの居所を通報する。愛する人の最高の裏切り、そして警察の銃弾によろめきながらラスパイユ大通りに出た路上で「くそったれ」と言って自分で目を閉じて息絶えるミシェル。
彼女は恋人の突然の死に泣いたりわめいたりせず、こうつぶやく。「くそったれって、どういう意味?」
パトリシアの通報どおりにラスパイユ駅から近い「カンパーニュ・プルミエール通り11番地」に行ってみると、そこには何の変哲もないアパルトマンがあります。ミシェルとパトリシアが最後の日を過ごす、友人の写真スタジオという設定だった建物。この通り自体とても閑散としていて、世紀の死がここで撮影されたなんて信じられないくらい。それでも、映画ファン、ゴダール映画好きにとっては、あのシーンが撮影されたと思うと感慨深い場所です。ただ、本当に普通の路地なので、フランス映画ファン以外の人にはあまりお勧めしません。
●住所/Rue Campagne Première 75014 Paris
●最寄りメトロ/「Raspail」4, 6番線
この映画が撮影されたのが50年前なんて信じられないくらい、パリの街並みはその姿をまだしっかり残しています。もちろん道路が舗装されたり、新しいお店ができたりという変化はありますが。だからこそ、映画ファンの私たちはその映画のワンシーンが撮影された場所を見つけては一喜一憂できるんですよね。
そして、この映画のジーン・セバーグの髪型は今でもとても新鮮で、ベルモンドのスタイルや演技は独特。当時の映画界の流れをぶち壊したジャン・リュック・ゴダールの最高傑作だったことは間違いありません。
パトリシアとミシェルのように、シャンゼリーゼ大通りをぶらぶら散歩しながら、今も変わらぬパリを楽しんでみてください。(文・写真/yumiko hikage)
『勝手にしやがれ』
(仏題:「A bout de souffle」)
監督:ジャン・リュック・ゴダール
1959年 90分 フランス作
フランス、ヌーヴェル・ヴァーグの決定打と言わしめたジャン・リュック・ゴダール監督のデビュー作。警官を殺してパリに逃げて来た自転車泥棒のミシェルは、アメリカ人の恋人パトリシアとお互い自由で束縛のない関係を楽しんでいた。そんなある日、彼の元に警察の手が及んでくる。パトリシアはミシェルの愛を確かめる為、彼の居場所を警察に密告、そして彼にも同様に警察が追ってきた事を伝えるが……。
















